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フィギュアレビュー、本・漫画の感想など

桑佳あさ『老女的少女ひなたちゃん』1巻

老女的少女ひなたちゃん 1 (ゼノンコミックス)

老女的少女ひなたちゃん 1 (ゼノンコミックス)

 桑佳あさ『老女的少女ひなたちゃん』1巻のレビューです。
 絵がかわいいので買ってきた。これはめっちゃいい漫画だ。



 カバーを取るとおまけがあります。


 88歳で死んだおばあちゃんが転生したという話。現在6歳。幼女だらけだし、みんなかわいい。カバーイラスト見てかわいいと思ったら買って間違いないはず。
 転生ものっていうと、30歳ニートが死んで異世界で俺TUEEEEとかそんな幼稚な内容ばっかりだと思ってたんだけど、この作品の設定つまり88歳のおばあちゃんが死んで転生っていう設定には新鮮さを感じた。しかもこの設定のおかげでかなり深い内容になってる。
 人生や時間というものをうまく表現してる。無邪気さ、かわいさ、おかしさ、むなしさ、不条理さ、いろんなものがないまぜになってる。一見、おばあちゃん口調の幼女がかわいいだけの漫画に見えるんだけど、じつは存在の意味というものに深く迫ろうとしているのではないか。
 最後のページで花火を見たひなたちゃんが涙を流してるんだけど、泣き描写が嫌いなぼくもここはかなりいいと思った。穏やかで自然な流れで涙を流しているし、この表現に誇張した部分はなく、とても説得力がある(p.91に伏線? もある)。ひなたちゃんは幼女でありながら、すでにすべてを失っているんだよね。それは人生の本質的な部分(つまりもっとも愛したものたち)についての喪失で、むしろひなたちゃんは転生したことによって真に死というものに向き合っているとも言える。そこに存在しているということが同時に喪失状態を意味する。
 ひなたちゃんの存在の手がかりってなんなのだろう。世界のどこにひなたちゃんの立つ位置があるんだろう。楽しさのなかに孤独が、それもほとんど絶対的な孤独がある。
 でもこうした孤独ってなにもフィクションのなかの転生者だけの問題ではなくて、ぼくらひとりひとり人間の問題でもある。死、記憶、時間。なにげなく生きているけれど、ぼくらはつねに死と表裏一体であり、ぼくらの存在は、はかなくて、むなしくて、あまりにも非力なものだ。でも生きなきゃいけない。そして生きるってどういうことなんだろう。ぼくらはこころの底から笑えるんだろうか。勝利とはなんなんだろう。
 とはいっても、ひなきちゃんは友達と一緒に明るく楽しくやっている。ここがすごい。そしてぼくはそこに無限大のむなしさを感じた。
 まあとにかくこの漫画は絵がかわいいのでおすすめですよ。ゆるい漫画です。
☆☆☆☆☆