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松村涼哉『ただ、それだけでよかったんです』

 松村涼哉ただ、それだけでよかったんです』の感想です。

 今日はてなで話題になってたのでさっき買ってきて今読みました。ラノベらしくないなどと言われているけど、うーん、やっぱりラノベだなって感じでした。大人が読んで感心するものではないです。ぼくも小中学生時代いじめられていて、それなのにぼくが悪者にされたりとかも普通によくありましたが、なんかべつにこれ読んでも共感とかではなくて、ただ単純にアホかと思ったくらいで。ぼくはいまコーマック・マッカーシーの『ブラッド・メリディアン』も同時に読んでるんですが、やっぱり比較するのもアホらしいくらい小説として次元が違いますよ。

ブラッド・メリディアン

ブラッド・メリディアン




 昌也という優等生が菅原によるいじめが原因で自殺し、真相が知りたくてその姉が調査をするっていう感じの流れ。いじめの犯人とされているのが菅原という少年で、菅原視点と昌也の姉視点の章が交互に並び、それぞれ一人称で語られていきます。
 でも結局真相は菅原がだーっと語るだけなので、だからなんだって感じです。
 いじめネタはありふれているのだし、もうちょっとこの作品独自の何かがほしかったかな。というか、もっといじめそのものに向き合って深く考えてほしかった。いじめ加害者だと思われていた菅原が実は昌也たちにいじめられていた被害者でしたっていういかにもエンタメな落ちにはがっかり。これって結局話の展開で面白くしてるだけで、そこに作品テーマに対する思想も洞察も誠意も何もないんだよなあ。こういう展開にしたら面白いんじゃね程度の発想で書いてる。家族の期待や世間の目を気にするプライドの高い優等生が自分でバカやって勝手に自殺しただけ。そもそもこんなことで死ぬことにリアリティが感じられないし、物語のために自殺させてみたという感じがする。とにかく薄っぺらで軽い。心底どうでもいい。
 あと、「人間力テスト」とかいう設定があるんですが、これがあんまり生きてない気がする。要するにこれは生徒同士に性格を採点させるもので、学年での自分の性格ランキングがわかるというもの。人望、評判ランキングみたいな感じかな。昌也は学年4位で、菅原は369位という設定。このランキングに一喜一憂あるいは戦々恐々としてる生徒たちっていうのが描かれてもいる。相互監視社会みたいな感じね。この設定にリアリティがなさすぎて、どうしてもアホかと思ってしまう。心理学の実験としてはありだと思うけど、こんなもんで現代社会が舞台の小説を書くのは正直馬鹿馬鹿しいと思った。異世界や未来世界のディストピアものならあるかもしれないけど。
 あと一番ぼくが問題だと思ったのは校長の言動が幼すぎるところ。作者が若いからしょうがないのかもしれないけど、この辺りも人間が描けてないなあと感じるところであって、こういう細部のクオリティの低さは作品全体に影響を与えてしまう。昌也の姉と対話するところがあるのだけど、親しくもない相手に「キミ」はいくらなんでも失礼すぎるんじゃないかな。いじめによって自殺した(と思われている)生徒の家族に対してこの態度って、いくらこの校長が傲岸不遜なクズ人間だとしてもやっぱりありえないとしか言えない。どうなってるんだよ。校長は嫌な奴ですよというわかりやすく幼稚な演出でしかない。
 会話文で「妄言」なんて言葉を使うのもセンスないなあと感じた。そんな喋りするやつ現実で見たことない。中学生ならなおさら。
 まあでも湊かなえの『告白』なんかも売れてしまう世の中だし、こういう薄っぺらなちょっと社会派気取りの軽いエンタメが評価される時代なのかもなあ。切実さがまったく感じられないというか整理されすぎててきれいすぎるというか。