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フィギュアレビュー、本・漫画の感想など

ディーノ・ブッツァーティ『古森のひみつ』

小説 児童書 ディーノ・ブッツァーティ ☆☆☆

古森のひみつ (岩波少年文庫)

古森のひみつ (岩波少年文庫)

 ディーノ・ブッツァーティ『古森のひみつ』の感想です。

古森――そこは動物や木の精が住まい、風たちが行きかう小さな深い森。しかし新しい所有者のプローコロ大佐は、命の宿るモミの大木に手をかけ、さらに不吉な願望を抱きはじめます。美しい幻想と、いつくしむ心が織りなすファンタジー。

 


 岩波少年文庫のほうも最近出た本ですが、もうひとつ翻訳出たみたいですね。

古森の秘密 (はじめて出逢う世界のおはなし)

古森の秘密 (はじめて出逢う世界のおはなし)

精霊が息づき、生命があふれる神秘の〈古森〉。森の新しい所有者になり、木々の伐採を企てる退役軍人プローコロ大佐は、人間の姿を借りて森を守ってきた精霊ベルナルディの妨害を排除すべく、洞窟に閉じ込められていた暴風マッテーオを解き放つ。やがてプローコロは、遺産を独り占めするために甥のべンヴェヌート少年を亡き者にしようとするが……。聖なる森を舞台に、生と魂の変容のドラマを詩情とユーモアを湛えた文体でシンボリックに描いたブッツァーティの傑作ファンタジー(1935年作品)。

 


 不思議な味わいの児童文学でした。あまりネタバレしたくないので書くことがないなw 初期の作品らしいですが、ブッツァーティらしさを感じました。
 最近の子供がこういうの楽しめるのかはわからないけど、ぜひ読んでもらいたいなあと。序盤でさくっとカササギが殺されたり、木を切り倒されて木の精が死んだり、毛虫とヒメバチの戦争があったり結構ハードな面もあります。でも全体を通してどこかあったかいユーモアがあります。
 自分の兄を殺されたカササギがなぜかプローコロになついて裁判において擁護までしたり、大人になったら精霊たちの声など聞こえないはずなのになぜかプローコロは会話できたり、そう簡単ではないんですよね。嫌な奴として描かれているプローコロや恐れられていたマッテーオも単純な悪ではないし、プローコロもマッテーオも時の流れのなかで変化(力の喪失)していきます。逆に時の変化を被るのは純粋で不思議な力を持つ子供たちもそうで、かれらは放火なんかしたりするし、いずれ子供から大人への成長にともなって純粋さを失って自然の声を聞けなくなっていくようです。
 最後のシーンはなんだかジーンときましたね。別れであり、旅立ち。子供としての自然と共鳴する神秘的な力を失って、これからはある残酷さ、狡猾さ、もっと一般的に言えば社交性を身につけていくということになります。なにかの喪失とともに人生の時は進んでいきます。人生の先に何があるのだろう。
☆☆☆