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パスカル・キニャール『さまよえる影たち〈最後の王国1〉』

 パスカルキニャール『さまよえる影たち〈最後の王国1〉』の感想です。

死に直面した作家が、そこで死ぬため、書き始めた“最後の王国”。群れず、そして服従せず、二十一世紀をありのままに語る、隠者の書。影/死者たちとともに、文学を渉猟し、断片化し、ショートさせる、書物脱構築!死者たちをめぐる変奏曲。小説の体をなしていないにもかかわらず、ゴンクール賞を受賞し、文学作品の定義/既成概念を打ち破った、異形の書。

 



 キニャールの〈最後の王国〉シリーズの1巻。今回のパスカルキニャール・コレクションでは2巻が先に出ましたね。
 内容的には2巻と同じように詩的なエッセイといった感じです。「小説の体をなしていないにもかかわらず、ゴンクール賞を受賞し、文学作品の定義/既成概念を打ち破った、異形の書。」などと帯に書かれてるんですが、べつにそんなにたいしたもんではないです。普通に面白いエッセイ的な本です。きわめて愚直な本というか。こうやって宣伝煽って必死に売ろうとする姿勢は正直あまり好きじゃないですね。これは読めるひとが自分の意志で読めばよくて、誰かにすすめてもらって(帯の宣伝文句にひかれて)読むような本ではないでしょう。
 内容は良いです。ぼくは哲学的な趣向の2巻のほうが好きですが。1巻はやや政治性が強いです。
 メモ

 遍くいきわたる光の支配に対して目に見える抵抗を示しても、必ず光の統治に屈することになる。
 そこに城壁や堤防を対置しても、光の拡散力にすぐに破られてしまう。
 この光の海には岸辺がない。
 あらゆるものが飲み込まれてしまう。
 それでも海面にあがってくる魚たち。死なないよう一呼吸する。
 呼吸、つまり読書。
(p.63)

芸術は、その非構成性において、体系の形をとって固定するものに対する他者である。
(p.107)

 芸術はいかなる時間秩序にも従わない。それは時間と同じく方向性をもたない。
 進歩もなく、資本もなく、永続性もなく、場所もなく、中心もなく、首都もなく、前線ももたない。
 溢れ出す時間によって作られた前浜。
 自由地帯というよりはむしろ、剝き出しの場所そのもの。
 絶えず解き放たれた地帯。満潮の海から自由になろうとするように、拡張する大地からもたえず自由になろうとする前浜。
(p.158)

☆☆☆