愛してくれてマジ感謝

フィギュアレビュー、本・漫画の感想など

ウラジーミル・ナボコフ『プニン』

プニン

プニン

 ウラジーミル・ナボコフ『プニン』の感想です。

亡命ロシア人プニン教授のアメリカでの生活を、ユーモア溢れる軽妙なタッチで、ときにアイロニカルな悲哀をおりまぜ描いた長編小説。
1953年から1955年にかけて『NewYorker』に掲載されたプニン教授を主人公にした小説をまとめ、書き下ろしの章を加えて1957年に刊行された。
読むたびに内容が変わるこの本を、読み終えることはできるのだろうか。
プニン的なるものの力を、わたしたちはつい見逃す。はっきりと指さすことはできず、注視すると消えてしまう。書けないはずのものを明瞭に描くナボコフは、だからたしかに魔術師なのだ。もしかしてこの小説の本文は、プニンというひとつの単語なのかも知れない。 円城塔

 




 ナボコフが英語で書いた作品。有名な『ロリータ』(1955)と『青白い炎』(1962)に挟まれてちょっと存在感のない1957年の作品です。すごい作品ではないですが、とっても楽しい作品でした(*´▽`*)
 三人称の小説かと思って読んでいくと「小生」が語っているということがわかり、勘のいいひとならもうその時点でだいたいネタが分かっちゃうような感じですが、第七章でいかにもナボコフ的な展開を見せます(「ゲオルギー・アラモヴィッチ、彼のいうことを信じてはいけませんよ。彼はなんでもでっちあげてしまうんです。まえに彼は、わたしと彼とがロシアで学校友達であり、試験のときにカンニングをしたという話を捏造したことがあります。彼は恐るべき創作者なんです」(pp.306-307))。そういうナボコフ的な部分も面白いですが、むしろ個人的にはバルザック的な大きな語りというか、滑稽で癖のある人物描写が楽しかったです。描写がいちいち可笑しく、ひとを馬鹿にしたような文体も面白く、読み始めると最後まで止まりません!
 またナボコフは描写も美しく、とくに印象に残ったのは以下の部分。

 まもなく彼らはみな再び眠りに落ちた。無人の街でのすばらしい光景を誰も見なかったのは残念なことだった。そこでは、夜明けの微風が光り輝く大きな水たまりの表面に漣を呼び起こし、電話線の影を判読しがたい黒いジグザグに映し出していたのだ。
(p.177)

 すばらしい描写はとにかくいくらでもあるんですが、ここはとくに好きですね。ちなみに原文だと、

  Presently all were asleep again. It was a pity nobody saw the display in the empty street, where the auroral breeze wrinkled a large luminous puddle, making of the telephone wires reflected in it illegible lines of black zigzags.
(引用はLibrary of Americaから)

こうなってます。なんかこの作品は原文でも普通に読めそうですね。『アーダ』を原書で読みかけてあっけなく挫折しましたが、ナボコフに再チャレンジしてみようかなと思えてきました。



 ナボコフ入門としてはいいんじゃないでしょうか。ナボコフというと難解というイメージがありますが、この作品は普通に楽しめるとっても楽しい作品です! 小説は最近避けてたんですが、読む楽しみを味わえてよかったです。
☆☆☆